中古厨房機器業界の未来

中古厨房機器
業界の未来

この業界には、まだ課題も多い。けれど、だからこそ変えられる。 現場から生まれた“しくみ”で、中古厨房機器の未来を再定義する。私たちはこの業界の現状と課題を見つめ、未来に向けた新しいあり方を提案します。

1. 中古厨房機器業界の規模

飲食店の開業や閉店は、時代に左右されながらも常に一定のサイクルで発生しています。そしてそのたびに生まれるのが、「まだ使える厨房機器たち」。この再利用を担うのが、中古厨房機器業界です。たとえば、日本全国で1年間に閉店する飲食店はおよそ6万店舗以上。そのすべてが厨房機器を処分しているわけではありませんが、そこには必ず“厨房資産”があります。また、新品厨房機器の市場規模は、推定2,000~2,500億円。一方、中古市場は明確な統計が少ないものの、数百億円規模のマーケットがあると見られています。中古市場の特性としては、

  • 需要が景気の変動に左右されにくい
  • 飲食店の個人開業(スモールスタート)ニーズに強い
  • 新品よりも短納期&低コストという利点で選ばれやすい

という点があり、景気が厳しい時期ほど注目されやすい構造になっています。ただし、その大部分が未だに“ブラックボックス”の中にあります。明確な流通統計が整備されておらず、再販価格や整備状況も業者によってまちまち。この“見えない業界構造”こそが、これからの未来を考えるうえでの出発点でもあるのです。

2. これまでと今後の見通し

中古厨房機器業界は、これまで“裏方”のような存在でした。新品と比べて注目されにくく、情報も少なく、どこか「価格の安さだけで選ばれるもの」という扱いをされがちでした。しかし、近年では業界を取り巻く環境が大きく変化しています。

  • 過去:処分・再販の“リユース市場”としての立ち位置

かつては、閉店した店舗から機器を引き取って、簡単に掃除して販売する。そんな“リサイクルショップ型”のビジネスが主流でした。新品に手が届かない店舗が「仕方なく中古を買う」構図があったのも事実です。

  • 現在:環境変化によって需要が拡大中

ところが、ここ近年ではそのイメージが変わりつつあります。新品機器の価格高騰(原材料費・物流コストの上昇)。人手不足・職人不足による納期遅延。物価上昇による開業コストの見直し。飲食店の働き方改革・業務の効率化ニーズ。 これらの要因が重なり、「中古でも高性能」「必要な機器をすぐに」「コストを抑えて効率よく」という需要が高まっています。特に、初期投資を抑えてスモールスタートを目指す個人オーナー層や、複数店舗をスピーディーに展開する成長企業などが中古厨房機器を戦略的に活用しはじめています。

  • 未来:業界が“選ばれる存在”になれるか

今後、この業界が本当に成長するためには、中古機器に対する信頼性の向上,流通情報の透明化、デジタルによる業務の効率化、オーナー視点での提案力の強化といった進化が必要です。価格が安いからではなく、「価値があるから中古を選ぶ」時代へ。中古厨房機器業界は、単なるリユースから“再定義”のフェーズに入ろうとしています。


3. 中古厨房機器業界の課題

中古厨房機器の需要が高まっている一方で、この業界にはいまだ多くの「課題」や「壁」が残されています。これは、業界全体が成熟しきっておらず、まだ“発展途上”にあることの裏返しともいえるでしょう。ここでは、主な3つの観点から業界の課題を整理してみます。

  • 業界の構造:属人性と不透明なプロセス

中古厨房機器の仕入れや販売は、いまだに個人の経験や勘に頼る場面が多いのが現実です。査定の基準や価格設定も業者によってバラバラで、**「なぜこの価格なのか」**という根拠が不明確なまま取引されることも少なくありません。また、再生・整備の工程についても標準化されておらず、「ただ洗って並べるだけ」の業者もいれば、分解整備まで行う業者もいるなど、クオリティの差が大きく、購入者にとっての不安材料になっています。

  • DXの遅れ:業界のニッチさゆえに

多くの業者が、表計算ソフト(Excelなど)をベースにした管理で止まっており、その情報を電話やFAXでやり取りするなど、業務全体としてはアナログな運用が多いのが実情で、在庫状況がリアルタイムで把握できなかったり、仕入れ情報の共有に時間がかかったりと、情報の非効率が現場に残ったままです。その背景には、この業界ならではの事情があります。 中古厨房機器業界には、専用の業務システムとして販売されているものは存在しません。 理由は明確で、市場がニッチすぎて開発会社が参入しないからです。仮に開発しても販売本数が見込めず、ビジネスとして成り立ちません。 そのため、一般的な「販売管理ソフト」や「在庫管理ソフト」をカスタマイズして使用する選択肢しかありませんが、結局は痒い所に手が届かず、使えないソフトになり、表計算ソフトや手書きメモに戻ってしまうのが現状です。こうした事情により、業界全体としてのDX化はごく部分的なものにとどまっています。

  • 競合の状況:均質化しやすい業界構造

中古厨房機器業界では、出店数の多さや在庫回転のスピードを強みに、スケールで勝負するビジネスモデルも存在します。 こうした展開は市場の活性化につながる一方で、商品構成やサービス内容が均質化しやすいという側面もあります。 一方で、中古厨房機器は店舗ごとに必要な仕様や条件が大きく異なるため、 本来は “現場ごとに合わせた提案力” が求められる業界でもあります。 しかし、現実にはその提案が十分に行われていないケースも散見され、 機器選定の段階で情報不足や判断ミスが起きてしまうリスクもあります。 また、明確な差別化が難しい業界構造ゆえに、価格競争や仕入れ合戦に偏りがちになり、本来重視すべき「品質」や「設置後のサポート」が後回しになる傾向も見受けられます。
中古厨房機器業界がこのままでは、 「安いけど不安な世界」で止まり続けてしまう。 そうならないためにも、構造の見直しと仕組みの進化が必要なのです。

4. ライズアップの考える業界の未来

私たちライズアップは、この中古厨房機器業界に大きな可能性があると信じています。 そして、今まさに「業界のあり方そのもの」を見直すタイミングが来ていると考えています。

  • 価値ある“循環”を生み出す業界へ

中古厨房機器は、ただの“安い代用品”ではありません。性能の良い機器を、再整備して、適切な場所に届ける。そのプロセスには、新品にはない**「再定義された価値」**があります。これからは、そうした価値の循環をデザインできる業者こそが選ばれる時代。 厨房機器を“売る”だけでなく、「再生 → 提案 → 施工 → アフターサポート」までワンストップで行うことが、飲食店の成功を支える武器になるのです。

  • 現場に最適な“しくみ”の提供こそが鍵

中古厨房機器業界の成長を支えるのは、職人の手作業ではなく“仕組み化”された現場です。誰が担当しても、同じクオリティで整備ができる工程。在庫の状況がリアルタイムで見える化されている状態。こうした業務の再設計と**デジタル活用(DX)**が、業界の未来を切り開いていきます。

  • 「全員が得をする」業界構造へ

私たちが理想とするのは、「誰かだけが得をする」仕組みではありません。

・機器を手放すオーナーが、適正価格で売れる
・中古機器を買う人が、安心して使える
・整備・施工する現場が、効率的に働ける
・営業が、仕入れ〜販売〜アフターまで一貫して動ける

このすべてがつながった状態こそが、理想の業界のかたちだと私たちは考えています。そして、それを実現するための“しくみ”が ——次に紹介する「厨房君」なのです。


5. そのための厨房君

私たちライズアップが独自に開発した「厨房君」は、中古厨房機器業界が抱える課題を“しくみ”で解決するために生まれました。この業界は、まだまだ属人性が強く、仕入れも販売も、現場の経験や勘に頼る部分が多い。だからこそ、誰がやっても同じ品質・スピード・成果を出せる「しくみ化」が必要だったのです。

  • 現場の業務を見える化し、つなげる

厨房君は、単なる販売管理ソフトではありません。私たちの業務のすべて——たとえば、

・買取の進行状況(いつどこで誰が査定、見積もりは?)
・再生の進捗管理(整備中か、清掃待ちか、販売OKか)
・販売在庫のステータス(撮影済み・公開待ち・販売中など)
・顧客ごとの商談メモや図面管理

これらすべてを一元管理できるクラウドシステムです。さらに、電子棚札(ESL)との連携により、現場の在庫と厨房君のデータが常に一致。「見に行かないとわからない」状態を、根本から変えることができます。

  • 業界を変える“土台”としての厨房君

厨房君は、単なる業務効率化ツールではありません。これは、**「中古厨房機器業界の未来を本気で変えるための武器」**です。私たちは、この仕組みをもとに、飲食店オーナー、職人、営業、整備、施工、すべての人が気持ちよく働ける環境をつくりたい。そして、厨房機器の再利用が「当たり前」になるような社会にしたい。厨房君は、その第一歩です。


6. 再利用から再価値化へ--
業界全体でSDGsに貢献する。

厨房機器は、ステンレスや銅、アルミなど、多くの資源から成り立っています。それを“使い捨て”にするか、“もう一度活かす”か。その選択によって、廃棄物の量も、CO₂排出量も、大きく変わります。私たちライズアップは、厨房機器の“寿命(ライフサイクル)”を延ばすことで、業界全体としてSDGsに貢献できると信じています。

・再利用による廃棄物の削減
・物流や製造エネルギーの削減
・地域密着の修理・整備による雇用創出
・飲食店の開業支援による地域経済の活性化

そしてそれを実現するための仕組みの1つが「厨房君」です。単にモノを売るのではなく、価値を循環させる“しくみ”を業界全体に広げていくこと。それこそが、これからの中古厨房機器業界に求められる「社会的な役割」だと私たちは考えています。